じいさんの回想録から

父は回想録というか、簡単な自分史を書き残していた。
生い立ち(樺太で生まれる)から、2度の結婚や仕事の事、軍歴まで書いてある。
自分の都合の悪い事も書いていないが、人の悪口も書いていないのはじいさんらしい(^_^)
77歳とわざわざ記述してあるから、T市で息子夫婦と同居し落ち着いた頃に書いたようだ。
その中に『S59年5月O建材店倒産、O家に個人貸前貸300万円、倒産時400万計700万円、
借用書なし。E男さん是を確認必ず返済するとの約定なり。』とある。

Oさんはじいさんの後妻さんの甥っ子で、今では一族で葬儀屋を営んだり老人ホームを経営している。
弟が亡くなった時も真っ先に駆けつけてくれて、何かと面倒見てくれたと記憶している。
我が家で同居を始めた時もその様な事を話していたが、借用書を見せられたわけでもないので信じていなかった。

回想録によるとO家に金を貸したのは64歳の時だから、これを書いた時点で既に時効は成立している。
(じいさんのことだ、多分催促だって一度もした事がないだろう)
じいさんは砂利屋や土建屋の帳場(経理)を長年やって来て、真面目で堅実な人間で知られた人物だそうだ。
実直な人間だっただけに”武士に二言はない”などと、かなり時代ズレした考え方の人だった。
借金に時効がある事を知らず、Oさんが必ず返してくれると信じて亡くなったのは幸せだったかもしれないと思う(^^;)

●借金の時効は、商事の場合5年。●友人同士のお金の貸し借りなど、民事債権は10年。